キネマ・ジャングル

国・年代・ジャンルを問わず、心に響いた作品について呟いてみる映画ブログです。

優しいユーモアが残る場所『スイート・スイート・ビレッジ』

こんにちは、キーノです。

 

今回の作品は『スイート・スイート・ビレッジ』

イジー・メンツェル監督、1985年・チェコスロヴァキア・103分

アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート(1986年)

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Credit:Amazon.co.jp

イジー・メンツェル氏は、僕の大好きな監督の一人で、同監督の『つながれたヒバリ』は、オールタイムベストのひとつでもあります。

 

もちろん本作もお気に入りの一本です。

 

あらすじ

チェコの片田舎にある小村クシュチョヴィツェ。

両親を亡くした白痴の青年オチクは、隣家のトラック運転手である中年のパヴェクに面倒を見てもらっていた。

しかし、オチクは簡単な作業でもミスを連発してしまい、パヴェクからコンビ解消を宣告される。

 

そんな折、オチクは、なぜか都市プラハの会社から雇用の申し出を受ける。

しかしそれは、オチクが両親から遺産として受け継いだ広大な家を、別荘代わりにしたいと願う会社理事の策略だった。

 

「凸凹コンビ」はスタコラと

「クシュチョヴィツェ」という舌を噛みそうな村を舞台に、主役ふたりが振りまく穏やかなユーモアが心地いい。

 

青年オチクは、長身痩躯で、純粋な心の持ち主。「お前は馬の生まれ変わりだ」とパヴェクにいじられても、ずっとにこやかな顔を絶やさない。

 

一方の中年パヴェクは、チビで太っちょのトラック野郎で、オチクを叱りながらも、心の底では彼を気にかけている。

 

ノッポの青年とチビポヨのおっちゃん、まさに凸凹コンビの名に相応しい二人だ。

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Credit:Amazon.co.jp

彼らには決まった習慣がある。

 

夜も明けきらない早朝、仕事場に向かうパヴェクが、オチクの家の前でピュイッと指笛を吹くと、木戸が勢いよく開いてオチクが駆け出してくる。

 

そしてオチクは嬉しそうに、パヴェクと自分の足取りをそろえにかかる。

 

これが彼らの出勤風景。

 

ピタリと足並みのそろう彼らの背中から漏れ出るおかしな空気に、いつも小吹き出ししてしまう。

 

ジム・ジャームッシュ監督やアキ・カウリスマキ監督作品に通じるような、言葉なきオフビート感がたまらないワンシーンだ。

 

時に取り残された優しい村

本作を彩るのは、オチクとパヴェクだけではない。

 

運転ベタでいつも衝突を繰り返す初老医師や年上の女性教師との恋にやぶれ自殺未遂をするパヴェクの息子ヤルダ。

 

それから、嫉妬深い夫に愛想を尽かした若妻ヤナの不倫物語やトラックに轢かれても無傷で、地面に出来た自分の型で石膏を作るパヴェクの同僚などなど

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本作には、村人たちのエピソードが紡ぎ合わされて、田舎村の全体像が次第に補完されていく心地よさもある。

 

そうして垣間見える村は、自然の美しさと村人の優しさに満ちた、まさにスイートスイートなビレッジだ。

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技術の進歩が騒がしい世の中で、この村のスローライフを見ることは、実にココロ小躍りする体験であります。

 

そして迎える素敵なエンディングには、きっと静かなる喝采を送りたくなるはずです。