キネマ・ジャングル

国・年代・ジャンルを問わず、心に響いた作品について呟いてみる映画ブログです。

『男性と女性』清潔よりも美しく

こんにちはキーノです。

 

今回の作品は『男性と女性』

 

セシル・B・デミル監督1919年(なんと100年前!)のアメリカ映画(93分)です。

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Credit:Amazon.co.jp

あらすじ

ローム伯爵一家は面倒な雑事を召使に任せ、贅沢な生活を送っていた。

ある日、船旅に出たローム一家と召使は船長の不注意で事故に遭い、難破する。

流れ着いた無人島は原始時代さながらの荒廃ぶり。

役立たずのローム一家に対し、召使たちは巧みに文明の道具をこしらえていく。

その中で徐々に貴族と召使の立場が逆転していくのだった。

 

小学生時に劇場で本作を観た淀川長治さんは、あまりの面白さにロビーの電話機に駆け込んで家族を呼び寄せ、二連続鑑賞したとか。

 

そんな幼い頃から映画の伝道師だったんですね。

 

しかし本作を観れば、淀川少年が家族を呼びたくなった気持ちも良く分かりますよ。

 

清潔な金持ち、美しい召使

本作はとてもユニークな幕開けをします。

 

ローム家で働く召使の少年がドアの鍵穴から中をのぞき見る。するとベッドでぐうたら眠りこけるローム伯爵の姿が。

 

それを見て少年はほくそ笑む。お次は隣のドアに移ってまた中をのぞき見。

今度は顔にシワ伸ばしのテープをベタベタ貼った次女の眠り姿が見える。

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Credit:youtube

また隣のドアに移り長女の姿を見ていると、後ろから首根っこをつかまれてヒョイと持ち上げられる。

召使長の若い男性クライトンだ。

 

しっかり者のクライトンは召使を皆集めて、今日のスケジュール確認を綿密に行う。

彼の合図とともに一日の仕事のスタートだ。

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Credit:youtube


起き出したローム家の者たちがすることは何もない。

朝食はベッドに運ばれ、朝風呂も召使が準備し、髪や服もすべて整えてくれる。

 

ここでその後の鑑賞中、頭にこびりついて離れない字幕がサッと入る。

 

人類は清潔になったが、より美しくなっただろうか。

 

ローム家は贅沢で豪奢な衣食住には事欠かない。身の回りの雑事は召使がすべてやってくれ、自分たちが汚れることはない。

 

まさに清潔な存在だ。

 

反対に召使は一日中働き、衣服は汚れ、貴族に出す食事を隠れてつまみ食いする。

しかし彼らには働くための手と考えるための頭がある。

 

デミル監督は、それこそ人類の美しさだと謳っているよう。

 

船が難破!無人島生活

その後ローム家は召使を連れ、自家用の中型船に乗って旅に出る。

ところが船長の操作ミスで岩礁にぶつかり、船がコナゴナに崩壊。

 

船室にどんどん海水がなだれ込む様は100年前とは思えないほどのド迫力!

 

命からがら一行がたどり着いた先は、荒廃した無人島だ。

そこで召使長のクライトンは、手際よく火を炊き、住処を確保し、狩りをする。

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Credit:youtube

ところがローム家はぼーっと見るだけで何にもできない。彼らには働く手と考える頭がないからだ。

 

ここから話の面白さが一段ギアを上げる。

 

召使と貴族の立場が逆転し始めるのだ。

階級が物を言わない無人島の上で、裕福さは何の役にも立たない。

 

こうしてローム家も生きるために、クライトンに従うことになる。

 

カッコいい男、美しく生きる決心

クライトンは皆のために家や服、そして通りがかった船にSOSを出すためのレバーなどをこしらえる。

 

皆に頼られ、ローム家の女性からも手のひらを返したように熱い視線が送られる。

そして絶大な権力を持ったクライトンはコロニーの王となった。

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Credit:youtube

観ている側はしめしめと思っていたが、ここがデミル監督の仕掛けた巧みな罠。

 

今度は王になったクライトンが働くことをやめ、代わりに貴族たちが雑事をこなすようになったのだ。

 

この生活が続くとたどり着く先は目に見える。それは冒頭のローム家と召使の関係性だろう。 

権力者と奴隷の逆転は人類の歴史に付きものの悪循環なのかもしれない。

 

 

その後、ついに船が遠くの海を横切った。皆はクライトンに知らせる。

 

ここでクライトンは逡巡する。SOSレバーを引けば煙が出て、元の生活に戻れる。

引かなければこのまま自分が島の王として豊かな暮らしを続けることが出来る。

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Credit:youtube

しかしクライトンは違った。彼は人類の悪循環を止める決意をした。

働く手と考える頭に平等を願う心が付け加わったのだ。

 

 

久しぶりに映画を観ていて鳥肌の立つカッコいい男でした。

 

そして無人島から戻った彼は召使としてではなく、より美しく生きる道を選びます。

このラストは見てのお楽しみ。

 

結論、淀川さんの目に狂いナシ!死角ナシ!ですね。